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2011年3月11日。あの日を境に「自分にとって一番大切なものは何か?」を
考えるようになった人は、少なくはないのではないでしょうか?

その結果、仕事や住まいなどライフスタイルの根底を大きく変えた人もいると思います。
これを読んでいる方もそのひとりかも知れません。
日本人が本来持っていると言われる「モノよりも心」の精神を
多くの人が取り戻しつつある、と言えるかもしれません。

しかしいっぽうで、今もなお日本や日本人の未来を憂いてしまうような
ニュースが後を絶たないのも事実。そんななか2020年に迎える東京オリンピック。

震災から4年、五輪まで5年。
このタイミングにいまいちど、日本と日本人を「俯瞰」してみたい。

そんな思いから、日本について外国の方にお話をうかがうこのインタビューを着想しました。

What does Japan mean to you?
〜あなたにとっての日本とは?〜

第1回はイギリスのGeoff Tozerさん。
東京大学や筑波大学で教鞭を執り、英語の著書も持つ彼に、インタビューしました。

※本インタビューを英語原文でお読み頂きたい方はこちら(English page is here)

【キーワード】マンチェスターユナイテッド/田舎暮らし/山梨/居酒屋/イギリス人は社交的/日本の教育システム/IELTS/TOEFL/TOEIC/日本とイギリスの共通点・相違点/日本人・イギリス人/アジア人・ヨーロッパ人/イギリスは50%が緑/満員電車/日本のタブー/ボランティア/東京五輪

◆ジェフさんはどちらのご出身ですか?

−マンチェスターから電車で20分ほどのマックルズフィールドという田舎で育ちました。
19世紀からシルクの製造で有名な町です。ちなみに、技術は日本から教わったものだと聞いています。

 

◆マックルズフィールドでの暮らしはどうでしたか?

−当時は、田舎暮らしに退屈していましたが、今戻ってみると、とても素敵な町だと感じます。
週末には、美しい景色を見ながらハイキングを楽しみ、素敵なパブで食事も楽しめます。

 

◆日本でマックルズフィールドのようなところはありますか?

−そうですね。山梨が近いかもしれないです。山梨は山が多いですよね。なので、景色は山梨に近いと思います。ただ、日本と違って、イギリスでは経済的に余裕がある方は田舎暮らしを好みます。
逆に、日本は都会に暮らす方が多い気がします。そういえば、マックルズフィールドにはマンチェスター・ユナイテッドの選手達が沢山住んでいますよ。
ちなみに、マンチェスター・ユナイテッドの選手の中にはマックルズフィールド出身の方はいません(笑)

 

◆日本に来たきっかけは何ですか?

−以前ギリシャで英語を教えていたのですが、イギリスに戻ったら仕事がなかなか見つからず……
そんなとき、日本にいた友達が日本をお勧めしてくれました。
フランス語を勉強していたイギリス人は多かったのですが、
私はちょうど違う文化や言語を学びたいなと思っていたので、日本に来ました。
とにかく新しいことに挑戦したいなと思って、あまりよく考えずに勢いで来ました。

東京に着いたら、とても親しみのある宿泊施設を見つけました。
そこは食事とベッドを無料で提供するかわりに、毎日一時間英語を教えることが条件でしたので、
日本人と外国人が一緒に住んでいました。
同じ部屋に4人一緒に暮らしていたのですが、生まれて初めてゴキブリを見て驚きました。
壁にはキノコまで生えていて(笑)とてもキレイとは言えない場所でしたが、皆さんとても親切でした。
初めての夜は、みんなで居酒屋へ飲みに行き、それが私の居酒屋初体験です。

 

◆居酒屋はどうでしたか?何を食べましたか?

−とても良かったです。居酒屋は私のお気に入りのひとつです。
基本的な日本食を頂いたのですが、とても安く、雰囲気も良かったです。
居酒屋は大好きです。仕切りのある個室がとくに良いですね。
1980年代でしたが、プライベートな空間のある居酒屋は居心地がとても良かったです。

 

◆日本で仕事はすぐに見つかったのですか?

−最初は、まずは旅行のつもりで来たのですが、英語を教える仕事が見つかり、
日本語を学ぶために日本語学校にも通い始めました。
それから長い間日本に暮らして、結婚して、子供ができました。
そして子供が4歳の時にいちど、イギリスに戻りました。

妻にとって、東京からイギリスの田舎への引っ越しはとても大変だったと思います。
イギリスは社交的な人が多いんですね。
たとえば子供を学校へ迎えに行くと、同級生の母親たちと会う機会が多いですが、
毎日のようにお互いの家に誘われます。
社交的でいることはとても素晴らしいことだと思うのですが、日本ではあまり習慣にないことですよね。
妻は、お客さんが来るといろいろなことを準備するので、それは彼女にとってとてもストレスだったのです。
そして5年後、妻の希望で日本に戻ってきました。

 

◆そもそも、なぜイギリスに帰国したのですか?

−いろいろ理由はあるのですが、日本の学校のシステムが少し心配でした。
あまり子供を行かせたいと思えなくて、よく夫婦で意見の相違がありました。

 

◆今はどのようなお仕事をしているのですか?

−いくつかIELT、TOEFL、TOEICなどのを書きました。
平日の夕方は2時間ほど大学でも教えています。
これまでに東京大学、筑波大学、成蹊大学、お茶の水大学などで教えてきました。

 

◆ジェフさんの専門は何ですか?

−私の専門はTOEFLとIELTSに関する学習を指導することです。

 

◆日本では盛んなTOEICは実際、世界ではどういう見方をされているのでしょうか?

−日本と韓国でよく知られていますね。TOEICができたのは恐らくTOEFLが難し過ぎたからだと思っています。
ですが、TOEICはリーディングとリスニングだけで、スピーキングとライティングのテストがありません
(TOEIC SWテストをのぞく)。
多くの方がTOEICを批判していますが、私はそんなに悪くないと思っています。
ある程度の英語の知識がなければ高得点はとれないですからね。

 

◆日本とイギリス人学生の共通点はありますか?

−正直に申し上げますと、すごく違いますね。東京大学で教えていた時、とても優秀な学生が多かったです。
彼らは、物事を深く考えます。
言語が違うので難しいと思いますが、多くの学生があまり本を読まないという印象を持っています。
あまり歴史にも興味を持たなかったように思います。
欧米では、物事の概念について深く考えたり、歴史の話をしたりしますが、
日本人は自分の考えを具体的に話したりするように思います。
また、授業中先生が主に話をしますが、私は生徒によく話をさせます。
グループワークで議論することに慣れることは大切なことだと思います。

イギリス人はよく旅をし、経験を重ねます。日本人はお金と時間がかかるせい
か、あまり旅にでることはないようにも感じます。個人的には、ほとんどの方
が同じ経験を重ねている印象があります。
もちろん良いなと思うところもあります(笑)
それははやりとても礼儀正しいところですね。
とても熱心な生徒も多い。私が知っている有名大学出身の学生達は、
一日5〜6時間睡眠で毎晩遅くまで勉強しています。

 

◆日本とイギリスの違いで感じることはありますか?

−似ているところも沢山ありますが、どちらも島国ですよね。
日本人は自分達のことを「日本人」だと表現します。イギリスも同じです。
ヨーロッパの話をするときは、自分たちがまるでヨーロッパに住んでいないかのような表現をします。
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違いとしては、日本人のほうが会社に対する貢献度が高いです。
私たちは5時が定時だとしたら、5時に家に帰ります。残業をすることはほとんどないですね。
以前、友人が8時に帰宅したら、奥さんに会社を辞めさせられたと聞きましたよ。
子供達との時間がない、という理由で。長いお休みも日本ではもらえないですよね。
私たちはあまりお金をかけずに旅行をするのですが、いつも長い休みをもらいます。

イギリスに住んでいたときの話ですが、車ごとフェリーにのって、フランスにキャンプに行きました。
たった1,000円ですよ。日本では、食事と宿泊先にお金をかけることが多くはないですか?
数日より、長い休みをもらって旅をするほうがいいなと私は思います。

◆日本に来て、慣れるまで大変だったことは何ですか?

−どこに行っても混んでいることですね。東京は緑が少なく、人が多いように感じます。
私は、田舎育ちなので時々自然を求めて田舎へ行きたくなります。
どこかで読んだ記事ですが、イギリスは50%が緑に囲まれているそうです。
ロンドンという都会でも東京より緑が多いですね。ラッキーなことに、私は筑波大学で教えることがあります。
そういう時は、緑の中を散歩し、自転車でサイクリングに出かけます。
緑の多い横浜でも教えているので、そういう場所での散歩は本当に癒やしです。
朝の満員電車は本当に大変ですからね(苦笑)

 

◆はじめて日本に来たとき、どのような印象がありましたか?

−イギリスとの違いを楽しんでいました。
一緒に居酒屋に行ってくれる友達もいたので、楽しかったです。
違いを目の当たりにすることがとても興味深いと思いました。
例えば、満員電車、駅でのティッシュ配りなど、何もかもが面白いと思いました。

 

◆ほかにカルチャーショックはありましたか?

−カルチャーショッックがなければ面白くないですよね。いつも期待していましたから。
お寺に行ったときの話ですが、私は畳の上に土足であがったことがあります。
初めてマンションを借りるときは、大家さんに「外人はだめ!」と言われたことがあります。
それは本当に驚きました。結構「外人はだめ!」と言われた経験もありますね。
クレジットカードを作りたかった時も、安定した職業に就いていたのにも関わらず、叶わなかった。
今は昔ほど言われなくなりましたが。

良い面を話すと、暴力的なことがほとんどないことです。日本人はとても優しいです。
私に指を指して、悪口を言う人もいませんでした。

 

◆どうやって奥さんと出逢ったのですか?

−とあるインターナショナルパーティーで出逢いました。彼女は、とても素敵な人です。
違いは沢山ありましたから、ゆっくりと信頼関係を築いて仲良くなりました。

 

◆日本でよく旅行しましたか?

−そうですね。いろいろなところに行きましたよ。四国、九州、北海道も行きました。
日本には魅力的なところが沢山あります。私はとくに飛騨高山付近が好きです。
最近は、福岡にも行きましたが、福岡の人達はとても親切にしてくれました。
西のほうにいくと、人懐っこい方が多い気がします。

ただ、自然災害は本当に怖いですね。初めて地震を経験したのはギリシャです。
イギリスでは地震がないので、驚きました。
友達の家に泊まっていた時にちょうど地震がきたのですが、すぐにこれが地震だとは気付かなかったです。
一番大きな地震を経験したのは仙台にいた時です。
ここが日本に素晴らしいところだと思うのですが、そういった災害が起きた時に、
盗みといった事件があまりないですよね。

 

◆三鷹での暮らしはどうですか?

−三鷹での暮らしは3年目になります。日本人の多くは便利さを追求すると思いますが、
我が家は駅から徒歩30分のところにあります。そのほうが安くて、公園や緑に囲まれているのです。
三鷹の前は妻の実家があった山梨にいました。山梨はすごく好きです。
ただ、多くの仕事はやはり東京に集中していると感じます。

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◆休みの日は何をしていますか?

−野川、二子玉川から深大寺や国分寺まで2時間かけて一人でサイクリングすることが多いです。

 

◆友達とどんな話をすることが多いですか?

−一般的な話をします。もう慣れていることなので、普段から日本と欧米の違いについて話すことはないですね。

 

◆英語を上達させるために一番いい方法は何だと思いますか?

−学校がもっと真剣に取り組むべきだと思います。
表面上では、外国人の先生を沢山雇い、英語の教育に力を入れているように思います。
しかし、娘の学校では外国人の先生が発音した後、日本人の先生が日本人英語でまた発音するのです。
生徒たちはその日本人の英語の真似をするのです。

野心もあまり感じられないですね。毎回いくつか単語を学ぶのですが、
20ほど単語を覚えたほうがいいと思っています。
まるで、あまりはやく英語を習得してほしくないのかなと思うことがあります。
数学は、何度も何度も練習させて早く上達させようにするのに、
英語に関しては本当にゆっくり、そう感じています。

国は、英語を学ぶことは愛国心がないとでも思っているのかなと、疑問を抱えてしまいます。
英語がすごく上手だったら、日本人ではないのでしょうか?
もっとレベルの高い教科書を与えて、積極的に教えるべきだと私は思います。
そして、先生がしゃべるより、もっと生徒に話をさせたらいいと思います。
もっとグループワークを増やして、議論をさせることです。
最近は、スマートフォンもありますし、発音の練習もそれでできます。
オンラインで英語も勉強できますし、学校は21世紀に追いついていないように思います。

 

◆    日本についてもう少しお聞きしたいと思います。日本、そして日本人の魅力とは何ですか?

−日本人はとても親切で、いろいろな面で助けてくれます。
日本語がまだ話せなかった私に、道案内に手伝ってくれたことがあります。
よく迷っていたので、本当に助けられました。
夜は食事を楽しむところが沢山あり、交流が持てた事が楽しかったです。

日本人は遠慮するところがありますよね。
英語の話題以外では、なかなか友達を作ることは少し難しいなと感じたことがあります。
英語が堪能な方とはとても話しやすかったのですが、そういう方は少ないです。
あるいは、私がもっと上手に日本語を話せるようになればいいのですが。

とても真剣な方も多いです。自分の仕事や勉強に対して真剣に取り組む姿勢が
ある方とお話するのは非常に興味深いと思います。その道の専門の方は追求心
があり、とても熱心です。

日本の歴史も好きです。旅をしながら、歴史的建造物を見るのは面白いです。
ほとんどの方はあまり興味を持たないようですが、田舎のほうが楽しいですよ。

 

◆日本人で影響を受けた方はいますか?

−私のお気に入りの小説家ですが、『日の名残り』を書かれたカズオ・イシグロが好きです。
他にも、谷崎潤一郎、志賀直哉、安部公房、清少納言も好きでした。
清少納言のユーモアが好きですね。歴史的に名高い小説を読むのはとても楽しかったです。
現代のものより、過去の小説のほうが好きです。多くの小説家から影響を受けましたよ。

普段の生活では、個性的な人に影響を受けやすいのですが、以前一緒の学校で働いていた友人がいます。
彼は、出版会社に転職し、私に出版社を紹介してくれました。それで本の出版が決まったのです。
本当に素晴らしい人で、誰に対しても公平で、正直で、お金のことばかり気にする人ではなかったです。
よく2人で会いましたよ。彼は、仕事を辞めて、仏教徒になりました。本当に尊敬できる友人でしたね。

 

◆日本のことをどのように表現しますか?

−娘が日本に戻って来たとき、前向きなことを言うようにと学校で言われていたようです。
イギリスでは、自分が考えていることを意見するように勇気を持たせるのですが、
日本ではネガティブな発言はタブーとされているようです。
なので、いつも前向きなことばかり書くようにしていました。

日本の良さは、多くの方が自分の仕事や勉強に対してしっかり責任をもって取り組むところです。
日本人の姿勢も好きです。弟がマンチェスターの大学に通っていた時、
4時半に閉店するお店に4時25分にお店に入ろうとしたら、店員に嫌な態度をとられたことがあります。
日本ではあまり見かけないことですよね。
閉店間近に行っても、すこし時間を延長してくれることのほうが多く感じます。

学校では、先生は時間が多少のびても、ちゃんと生徒の質問に答えてくれます。
プロの根性とでも言うべきでしょうか。
イギリスでは楽しみやプライベートが優先されますから、5時が定時だとしたら、きっかり5時には帰ります。
誰かのために残って手伝うことはほとんどないのでは、と感じます。
イギリスに帰国したときにそういったことに気付かされます。

成田に到着して、東京まで行く時は結構快適です。日本人は気持ちよく対応してくれます。
ロンドンのヒースロー空港に到着したとき、インフォメーションデスクには誰もいなくて、
誰も助けてくれませんでした。日本は本当に便利で親切な国だと思います。

 

◆2020年に東京で行われるオリンピックが観光客にとって
有益なイベントとして成功するために大事なことは何だと思いますか?

−短い期間で有益な結果をもたらすことはないと思います。時間はかかると思います。
ロンドンでオリンピックが開催されたとき、イギリスはあまり経済的な余裕がなかったので、
多くのボランティアを募りました。日本でもそうするべきだと思います。
世界中から人が訪れたときに、東京のホテルで足りるのかが疑問です。
街を活気づけることが大事だと思います。

 

◆ジェフさんが東京オリンピックの大使だとしたら、何をしますか?

−まずは、渋滞をなくします。東京から渋滞がなくなれば、
もっと居心地のいいところになると思うのです。そして、道の真ん中に木を植えたいですね。

それから、日本に長く住んでいると忘れがちなのですが、露出されている電力
線が気になりますよね。あの電力線を地面の下に埋めたいです。本当に恐ろしいですよ。
宿泊を提供してくれるボランティアも募集します。これはすごく素敵なことだと思います。

 

◆今後はどんな人生を歩まれたいですか?

−自分で小さな学校を開講したいです。IELTSやTOEFLの授業をしてみたいですね。
毎年考えるのですが、忙しさを言い訳にまた一年が過ぎてしまいます(笑)

 

◆いつかはイギリスに、という思いはありますか?

−一生懸命働かないと東京で暮らすのは本当に大変だと思います。
もし、働くのを辞めたら破産するでしょう。
60代になったら、東京に暮らすのは難しいのでイギリスの田舎に帰りたいなと思っています。

 

◆最後に、読者の方にメッセージをいただけないでしょうか?

−確かに大変なことはたくさんあるかもしれませんが、未来は明るいと思います。
東京は人で溢れていますが、最近は人口が減少しています。
私たちの孫の世代になったら恐らくいまよりもっと人口は減っているでしょう。
田舎暮らしを大事にしていれば、もっと日本の美しさに気付くと思います。
政府が田舎にお引っ越ししてもいいのではないかと思っています。
地方でも街が活性化されれば、もっと広々と人は生活できて未来は明るいと思います

(了)
プロフィール/ジェフ・トーザ
イギリスのマンチェスター出身。ヨーク大学(University of York)卒業、専攻は英文学。
IELTS、TOEFL、BULATS、英検など、さまざまな資格試験対策の指導を長年日本で続けている。
また、東京大学、筑波大学、お茶の水女子大学、成蹊大学でも講座を教えている。
主な著書に『パーフェクト攻略IELTSライティング』『パーフェクト攻略IELTSリスニング』などがある。

※取材協力 ローフード & ビーガン レストラン・レジュベ

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