「いつもどんな準備をしているのですか?」

インタビュアーという仕事について「アポをどうやってとるのか」と同じくらいよく聞かれるのがこの質問です。

 

「段取り八分」とよく言われるようになにごとも準備は大切ですよね。もちろんぼくも事前準備には質量ともにかなりのエネルギーと時間をかけます(実際これだけでいま書いている本の一章分に相当するくらいです)。

準備についてはまた別の機会にゆずるとして、同じくらい(ある意味それ以上に)インタビューの成否をわけるのが「まっさらになる」ことです。

本番のインタビューでは事前準備はいったんすべてわすれて、目の前にいる相手との会話だけに集中するといいかえてもいいでしょう。いわば「白紙になる」。なんだか禅のようですね(笑)

でも、言うは易く行うは難し。

駆け出しの頃こんなことがありました。

たしかに事前準備は大切です。どんな質問をするのかをリストアップしておくのもいいと思います。けれどいちばん忘れてはいけないのは、目の前にいる相手。あたりまえのことですが、駆け出しの頃のぼくは全然これができていなかったんですね。

たとえばある教育者の方にインタビューしたときのこと。ぼくは事前に用意した質問を聞くことが目的になってしまったんですね。だから何だか相手も枠に嵌められたようで居心地が悪いし、こちらも質問をしながら「次はこの質問をきかなきゃ」と、文字通り心ここにあらず。これではうまくいくはずもありません。

たとえば誰もしるある有名な起業家にインタビューしたときのこと。彼は今も昔も「あること」に傾倒しているのですが、ぼくはそのインタビューでどうしても「こう進めたい」という流れを勝手にイメージしてしまっていたんですね。リスナーや世の中はこの話題を知りたいはずだからここにひたすらフォーカスしていこうと。もちろんアポ取りの際にテーマとしてもその話をうかがいたい、という旨はお伝えしていました。けれど当日その彼は全然乗り気じゃない。でもぼくは意固地になって彼が傾倒していた「あること」には触れなかった。だからインタビューは全くうまくいきませんでした。

いま考えれば当たり前ですよね。相手は機械じゃありません。生身の人間です。事前のイメージはイメージに過ぎないし、仮に面識があったとしても、いまそこにいる人は、以前の彼とは何かが変わっているかもしれない(ひとりとして昨日と全く同じ人間はいないのでは、とぼくは思います)。

こうした苦い経験をして、ぼくはあるときから事前準備や聞きたい質問はいったんわすれ、まっさらな気持ちでのぞむようになりました。

大切なのはわざわざ時間をとってくれた相手をリスペクトし、いかに心地よく話してもらえる「場」をつくるか。といいかえてもいいかもしれません。無理にメインテーマにひっぱる必要もないし、テンションをあげる必要もありません。相手にこびるわけでもなく、とにかく相手に寄り添って、話したいことを話してもらう。

作家の角田光代さんと対談したときは理想型に近かったかなあ。

019

そうすると不思議なことに、結局はこちらが聞きたいことを向こうから話してくれたり、準備通りに進めていたら決して生まれなかった面白い話が引き出せるようになるんですよね。そしてその対談の受け手(リスナー・読者)をアップデートするような話も結果的に引き出せることが多いんです。

これだけ準備したんだから聞かないともったいない。みんながこれを聞きたがっているはずだから聞かないと。こうしたしばりをいったんすべて手放してみる。いまでも完璧にはできませんが、ほんとうに大切なことだと思います。

もちろん、すべてを忘れるといっても、事前準備や質問が本当に頭の中から完全に消える、というわけではありません。むしろいったんその場で解放してあげることで、インタビューの場では必要なときに自然と出てきます。

理想は日常会話のようなインタビュー。事前準備はベストをつくすけれど、毎回すべてを手放す。俗人のぼくがなぜ禅僧のような仕事を選んだのかは自分でもわかりませんが(笑)、ともあれ毎回この「場」を楽しみたいと思います。

かくいう今日もこれからLife Update Unlimitedのインタビューです。

それではまた!

 

【お知らせ】Life Updateが生まれ変わりました

2019年3月まで配信しておりました「Life Update」は、
インタビュー聴き放題・読み放題WEBマガジン「Life Update Unlimited」に生まれ変わりました。

top-img02

最新ゲストは石田衣良さん(小説家)。
テーマは「センスと結果を良質させる文章とは」です。

ira-v3-1024x853

小説、実用書、コラム、エッセイ……ただ感性に任せた文章を書いてもなかなか評価されない。
いっぽうで、仕事で必要な宣伝文やブログ、SNS……評価や売ることを意識しすぎるとセンスや自分がなくなってしまう。

そんな悩みを持つ書き手が現状を打破してセンスと結果を両立させるには?
売るが命題のコピーライターからセンスで勝負する小説家に転身。

『池袋ウエストゲートパーク』や『娼年』シリーズなど多くのベストセラーを生み出し、
今年デビュー22年目を迎えた直木賞作家の石田衣良さんにうかがいました。

会員になると、石田衣良さんのほかにも、のべ50以上の対談記事や音声がお楽しみいただけます。
今後も適宜アップデートしていきますのでどうかお楽しみに!

現在配信中の対談例

2c55759efd87cee074c1290ecc46dc3d-1024x853767aa9dc563ef1d95392c7dc341d8682-1024x853924c75e0130a693c5ab276c6763a7f1a-1024x8539b28a1d319c1da28b847bb00238532b6-1024x8539351fc355e8f182fb4519d025085a32f-1024x853c655a0235948cc1fa567c08cc72adddf-1024x853b9c247a7f155fceb776c6fef9d6e131d-1024x853ando-v1-1024x853kuramoto-v-1024x853odahara-v-1024x853tetsuro-v-1024x853will-v1-1024x853

 

関連情報5/16(木) 石田衣良さん「読書オフ会」開催

 

Life Update Unlimitedの対談ゲスト、石田衣良さんの「読書オフ会」が開催されます。

テーマは短篇(ショートショート)。
選書は山本周五郎の『その木戸を通って』(新潮文庫『おさん』収録)です。

衣良さんいわく「人情ものの傑作」!
読書会自体はじめてという方も参加しやすいイベントです。

ぼく(早川)も参加しますので、ぜひお気軽にご参加ください。

日時:2019年5月16日(木)19時00分~21時20分(開場18時40分)

詳細・お申し込みはこちらから

スクリーンショット 2019-03-28 16.01.33

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

今日も明日もみなさんにとって素晴らしき1日となりますように!

プロインタビュアー 早川洋平

 

Life Updateの更新情報や記事の一部をお届け
早川やキクタスの最新情報をお届けします
Life Update ニュースレター

※全て必須項目です。


 

 

主催イベント&ワークショップ

session-header-1024x621

このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る